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生前贈与を受けた人が相続放棄すると?

負債を抱え込んでいる人が、自分の子らに生前贈与して不動産などの名義を変更し、その後お亡くなりなった場合、相続人は、負債を背負い込まないように、相続放棄できるかという問題があります。

相続放棄の要件は、民法915条に従って、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすること、法定単純承認(民法921条)が成立していないことをもって、可能であり、生前贈与を受けたことは、相続放棄の要件と無関係なので、生前贈与を受けた人であっても相続放棄が可能ということになるというのが結論です。

しかし、亡くなった人にお金を貸していた人からすると、本来弁済にあてないといけない財産が、勝手に子供に譲られていて、いわゆる「財産隠し」のようにもなるわけです。

さすがにこれは、宜しくないということで、債務者が債権者を害することを知りながら自己の財産を減少させ、債権者が正当な弁済を受けられないようにすることを禁じる詐害行為取消権(民法424条以下)が適用になります。

その結果、債権者は、先の贈与を取り消すことができます。但し、この場合、詐害行為取消権は債権者がその詐害行為を知ってから2年以内であり(行為の時からは10年以内である、民法426条)、裁判所に請求することによります。

もし、贈与が取り消されると、財産を受けた人(受贈者)は、贈与者に財産の返還をしなければなりませんが、贈与者が亡くなっていた場合は、その財産は相続財産となって、被相続人の債権者は相続人に対してその債務の弁済を求めることができるようになります。

結局のところ、債権者を害するようなことをしてはいけませんというのが教訓でしょうか!

なお、相続放棄自体には、詐害行為取消権は行使できないという最高裁判決が出ているようです(最判例昭和49年9月20日)。