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賃貸物件から退去するときの「原状回復」の義務が変わった?

従来、マンションやオフィスの賃貸借契約が終了したとき、賃借人は住んでいた時に生じた損傷について、「原状回復」の義務を負うとされていましたが、その定義や範囲は法律上明文化されていませんでした。

改正民法では、第621条※に、「原状回復」について規定されました。それによると、原則、入居後に生じた損傷は賃借人に原状回復義務があるとされておりますが、例外として、入居後に生じた損傷であっても、①通常の使用をしていて生じた損耗、②経年変化、➂賃借人の責めに帰すことが出来ない事由によるもの(例えば地震などで生じた損傷)は、原状回復義務はないとされています。

ただし、上記規定は「任意規定」であり、法律のルールとは別の定めをすることもできるため、賃貸借契約に特約がある場合は、民法の規定よりも原状回復の範囲が賃借人にとって広くなる可能性もあります。従って、これまで同様に、入居時に結ぶ賃貸借契約をよく確認する必要はあります。

※新民法621条:(賃借人の原状回復義務)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。